燃焼の難易

燃焼の難易

燃焼の難易については、物理・化学の多くの項目との関係する分野横断的な知識が試されます。
暗記で対応しようとするとかなりの量を覚えることが必要となります。

そのため、理解を中心にした学習が有効です。

出されるのは簡単な問題ばかりなので、確実に得点できるようにしておきたいところです。

燃焼を容易にするものを、燃焼の三要素に関連付けてあげていきます。

可燃物について

可燃物が燃えやすい性質であれば、燃焼が容易になります。

  • 酸化されやすい
  • 引火点、発火点が低い
  • 沸点が低い
  • 燃焼範囲が広い
  • 燃焼熱(燃焼による発熱)が大きい
  • 熱伝導率が小さい
  • 比熱・熱容量が小さい
  • 空気との接触面積(比表面積)が大きい

酸化されやすい(=還元性が強い)

酸化されやすいかどうかは、物質の化学的な性質によります。

第2類(可燃性固体)や第4類(引火性液体)は酸化されやすい(還元性が強い)物質です。

引火点、発火点が低い

引火点、発火点が低いことは、より低い温度で引火、発火しやすいことを意味します。

沸点が低い

沸点が低いことは、より低い温度でより多くの可燃性蒸気が発生しやすいことを意味します。

燃焼範囲が広い

燃焼範囲が広い、つまり燃焼範囲の下限界が小さい、上限界が大きい、あるいはその両方、ということです。

燃焼熱(燃焼による発熱)が大きい

燃焼熱が大きいと、燃焼の連鎖が継続しやすくなります。

熱伝導率が小さい

熱伝導率は、熱伝導のしやすさを表すものです。

熱伝導率が小さいということは、熱が伝わりにくいことを意味します。
熱が伝わりにくいと、熱が外部に流れ出ずに蓄積するので、温度が上昇しやすくなります。
温度が上昇しやすければ、燃焼する温度に達しやすくなるので、燃焼が容易ということになります。

なお、熱伝導率と電気伝導率(導電率)とは正の相関があるので、電気伝導率が小さいものも燃焼が容易になります。

比熱・熱容量が小さい

物質の比熱・熱容量が小さいが小さいと、物質の温度が高くなりやすく、燃焼が容易になります。

比熱と熱容量
比熱

比熱は、ある物質1gの温度を1℃(=1K)高めるのに必要な熱量です。

比熱の大きい物質ほど温まりやすく冷めにくいことになります。

熱容量

熱容量は、ある物質の温度を1℃高めるのに必要な熱量です。

熱容量と比熱は次の関係にあります。

熱容量=物質の質量×比熱

やや参考:比熱と熱容量との単位

危険物取扱者試験では、比熱の単位はJ/g・K、熱容量の単位は(J/K)が使われることが多いようです。

ある物質(g)をT(K)温めるのに必要な熱量は
熱量(J)=物質の質量(g)×比熱(J/g・K)×T(K)
    =熱容量(J/K)×T(K)
となります。

危険物取扱者試験では、単位についての知識を試してくるものは多くはありません。
まずは細かい点にこだわらず、比熱と熱容量の関係を把握することを優先させたほうが賢明です。

空気との接触面積(比表面積)が大きい

比表面積は、単位質量あたりの表面積のことです。

同じ質量であれば、酸素と触れる面積が大きくなるほど酸化しやすくなり、燃焼が容易になります。

ちなみに、甲種試験では比表面積に関する計算問題が出されることがありますが、乙種試験ではそこまで求められることはないようです。

酸素供給源について

  • 酸素濃度が高い
  • 雰囲気の圧力が高い

→いずれの場合も酸素が多い状態になります。

点火源(熱源)について

  • 周囲の温度が高い

燃焼の難易に直接関係しないもの

  • 膨張率(体膨張率・線膨張率)
  • 蒸発熱(気化熱)

蒸発熱(気化熱)

蒸発熱(気化熱)はマイナス、吸熱なので点火源(熱源)になり得ません。
選択肢の一つになることが、意外なほどあります。

着火の難易

  • 最小着火エネルギーが小さい

最小着火エネルギーが小さい
→小さなエネルギーでも着火しやすく危険

最小着火エネルギー

最小着火エネルギーは、可燃性気体の着火に必要となる最小限度のエネルギーです。

可燃性気体は、ある値を超えたエネルギーがなければ着火せず、それ未満のエネルギーでは着火しません。
この閾値(いきち、しきいち)となるのが着火エネルギーです。

着火エネルギーは、物質の性質や濃度、状況により異なります。
最も小さなエネルギーで着火する濃度における着火エネルギーが最小着火エネルギーです。