危険物乙4試験を一夜漬けで合格するために、物理・化学で欠かすことのできない頻出分野についてまとめていきます。
危険物乙4試験での一夜漬けはおすすめしませんが、時間がなければ仕方がありません。
できる限りのことをやって、ギリギリまで足掻こうじゃありませんか。
このページでは危険物に関する法令の頻出分野をまとめています。
ここに挙げた項目で、確率的には出題の半分程度をカバーできるでしょう。
運が良ければ合格圏に手が届くのではないかと考えています。
なお、語呂合わせの中には記憶に残りやすくするため、おかしな表現を使っているものがあります。
あくまで試験用ということでご容赦頂ければ幸いです。
燃焼
燃焼とは
燃焼とは、発熱と発光を伴う連鎖的な酸化反応をいいます。
熱と発光を伴う
発熱または発光を伴わないものは燃焼ではありません。
連鎖的
酸化による発熱が周囲の物質を活性化し、その酸化を引き起こす
点火・発火→その熱で周囲が活性化→周囲も点火・発火→その熱で周囲が活性化→…
燃焼後の物質
物質は燃焼により、より化学的に安定した物質に変化します。
ex.
C(黒鉛)+O2→CO2
CnH2n+2(アルカン)+((3n+1)/2)O2→nCO2+(n+1)H2O
(C6H10O5)n(セルロース)+6O2
燃焼の三要素
燃焼の三要素は、燃焼に必要な3つの要素です。
→いずれか一つでも欠ければ燃焼しません
- 可燃物
- 酸素供給源
- 点火源
語呂:年少さんの母さん教典
年少さんの :燃焼の三要素
母 :可燃物
さん教 :酸素供給源
典 :点火源
可燃物
可燃物は、燃える物質です。
形状(微粉状等)により可燃物となる物質もあります。
ex.金属粉、鉄粉等
酸素供給源
酸素供給源は、可燃物を酸化させる物質です。
酸素供給源には、酸素だけでなく、他の物質を酸化させるものも含まれます。
- 酸素
- 酸化性物質
- 第1類危険物
- 第6類危険物
第5類危険物(自己反応性物質)の多くは分子内に酸素を含有しており、それだけで燃焼します。
→可燃物と酸素供給源が共存
点火源
点火源は、物質に活性化するエネルギーを与えるもので、火をつける力を持つものです。
- 火気
- 火花
- 高温体
摩擦熱等による高温も点火源になりえます。
その他、高温になりうる熱源
- 反応熱
- 酸化熱
- 発酵熱
- 吸着熱
- 重合熱
燃焼の形態
ある物質がどのような燃焼形態をとるかを聞いてくる出題が少なくありません。
知っていれば得点できるものなので、しっかり覚えておきましょう。
- 気体の燃焼
- 予混合燃焼
- 拡散燃焼
- 液体の燃焼
- 蒸発燃焼
- 固体の燃焼
- 表面燃焼
- 蒸発燃焼
- 分解燃焼
- 自己燃焼(内部燃焼)
- 有炎燃焼と無炎燃焼
気体の燃焼
気体の燃焼には、予混合燃焼と拡散燃焼とがあります。
予混合燃焼
予混合燃焼は、可燃性気体と空気を燃焼できる濃度範囲となるように予め混合したものの燃焼です。
拡散燃焼
拡散燃焼は、可燃性気体を空気中に拡散して燃焼範囲とする燃焼です。
燃焼範囲
燃焼範囲は、燃焼可能である可燃性気体と空気の割合の範囲のことです。
可燃性の気体は、空気中で濃すぎても薄すぎても燃焼できません。
可燃性の気体が空気中で燃焼するためには、可燃性の気体と空気が適切な割合で混合している必要があります。
燃焼可能である可燃性気体の空気に対する濃度の範囲が燃焼範囲です。
液体の燃焼
液体の燃焼は蒸発燃焼です。
蒸発燃焼
蒸発燃焼が起こるためには、可燃性蒸気が燃焼範囲になければなりません。
可燃性蒸気が空気中で燃焼するためには、可燃性蒸気と空気が適切な割合で混合している必要があります。
固体の燃焼
固体の燃焼には、表面燃焼、蒸発燃焼と分解燃焼があります。
表面燃焼
表面燃焼では、空気と接触している固体表面が直接燃焼します。
後述の分解燃焼と違い、熱分解を伴いません。
表面燃焼するもの
- 木炭
- コークス
- 金属粉(第2類危険物)
→ほぼ単一の可燃物質(炭素、金属等)になっているもの
蒸発燃焼
蒸発燃焼では、蒸発(昇華)した蒸気が燃焼します。
後述の分解燃焼と違い、熱分解を伴いません。
蒸発燃焼するもの
- 硫黄(第2類危険物)
- ナフタレン
- 固形アルコール(第2類危険物:引火性固体)
→蒸発燃焼するのは、昇華する物質です。
語呂:コネの姫は金持った子、ジョイナーの部下ね
コネの :固体の燃焼
姫は :表面燃焼(ひょう‐めん)
金 :金属粉
持った :木炭
子 :コークス
ジョ :蒸発燃焼
イ :硫黄
ナ :ナフタレン
ー(あ)の :(固形)アルコール
部下ね :分解燃焼
分解燃焼
分解燃焼では、熱分解により生じた可燃性気体が燃焼します。
熱分解は、加熱によって物質を構成する分子がより小さな分子に分解することです。
熱分解により可燃性気体が放出され、その可燃性気体が燃焼します。
分解燃焼するもの
- 木材
- 紙
- 石炭
- プラスチック等の高分子固
→身の回りの多くの品は、燃えるときには分解燃焼します。
自己燃焼(内部燃焼)
自己燃焼(内部燃焼)は、分解燃焼のうち、分子内に含有する酸素を酸素供給源とする燃焼です。
自己燃焼(内部燃焼)するもの
- セルロイド
- ニトロセルロース
- その他危険物第5類(固体)
語呂:自然薯を悟空とセルに似せる
(ドラゴンボールです)
自然薯を :自己燃焼(じねんじょ→じこねんしょう)
悟空と :第5類
セルに :セルロイド
似せる :ニトロセルロース
有機物の燃焼
有機物の燃焼の形態
- 有機物の液体:蒸発燃焼
- 有機物の固体:分解燃焼
- 例外:引火性固体(固形アルコール):蒸発燃焼
有機物の完全燃焼
- 完全燃焼すると、水と二酸化炭素等が発生する
引火と発火
引火とは
引火は、空気中で、可燃性物質に外部から火源を与えると燃焼をはじめることです。
引火には、炎や火花等の火種が必要です。
発火とは
発火は、空気中で、可燃性物質に外部から火源を与えなくても燃焼をはじめることです。
発火には火種は必要ありません。
引火点、発火点、燃焼点
引火点
引火点は、液体が引火する最低の液温です。
言い換えると、可燃性液体が、燃焼範囲の下限値の濃度の蒸気を発生するときの液体の温度となります。
試験対策としては、後者の定義が重要になります。
発火点
発火点は、可燃性物質が発火する最低温度です。
つまり、可燃性物質を空気中で加熱したとき、他から火源を与えなくても自ら燃焼を開始する最低温度のことです。
燃焼点
燃焼点は、燃焼を継続させるのに必要な可燃性蒸気が供給される温度です。
引火点、発火点と燃焼点の関係
通常、引火点<燃焼点<発火点です。
燃焼範囲
燃焼範囲は、空気中で可燃性蒸気が燃焼することができる濃度の範囲です。
- 燃焼範囲は容積百分率(vol%、体積百分率、容積パーセント)で表す
- 容積百分率=((蒸気量)/(空気量+蒸気量))×100%
- 燃焼が爆発となるときは爆発範囲という
燃焼限界
燃焼限界は、燃焼範囲の限界濃度です。
燃焼限界の高濃度側を上限界(上限値)、低濃度側を下限界(下限値)といいます。
前述したとおり、燃焼範囲の下限界に相当する濃度の蒸気を発生する液体の温度が引火点です。
燃焼範囲と危険性
燃焼範囲が広いもの、下限界が小さいものは引火しやすく危険です。
燃焼の難易
燃焼を容易にするものを、燃焼の三要素に関連付けてあげていきます。
可燃物について
可燃物が燃えやすい性質であれば、燃焼が容易になります。
- 酸化されやすい
- 引火点、発火点が低い
- 沸点が低い
- 燃焼範囲が広い
- 燃焼熱(燃焼による発熱)が大きい
- 熱伝導率が小さい
- 比熱・熱容量が小さい
- 空気との接触面積(比表面積)が大きい
このほか、紙や木材等は水分を含むと燃えにくくなる等の出題もあります。
酸素供給源について
- 酸素濃度が高い
- 雰囲気の圧力が高い
→いずれの場合も酸素が多い状態になります。
点火源(熱源)について
- 周囲の温度が高い
燃焼の難易に直接関係しないもの
- 膨張率(体膨張率・線膨張率)
- 蒸発熱(気化熱)
着火の難易
- 最小着火エネルギーが小さい
最小着火エネルギー
最小着火エネルギーは、可燃性気体の着火に必要となる最小限度のエネルギーです。
可燃性気体は、ある値を超えたエネルギーがなければ着火せず、それ未満のエネルギーでは着火しません。
この閾値(いきち、しきいち)となるのが着火エネルギーです。
着火エネルギーは、物質の性質や濃度、状況により異なります。
最も小さなエネルギーで着火する濃度における着火エネルギーが最小着火エネルギーです。
自然発火
自然発火は、物質が常温の空気中で自然に発熱し、その熱が蓄積されることで発火点に達して燃焼をはじめる現象です。
自然発火の発熱源
- 酸化熱:乾性油、原綿、石炭、ゴム粉、鉄粉等
- 分解熱:セルロイド、ニトロセルロース等
- 発酵熱:堆肥、ゴミ、干し草等
- 吸着熱:活性炭等
- 重合熱:酸化プロピレン、アクリル酸等
酸化熱による自然発火
乾性油等は、空気中の酸素に触れて酸化され、酸化熱を生じます。
この酸化熱が蓄積すると発火することがあり、これが酸化熱による自然発火です。
乾性油の自然発火
乾性油が空気に触れると、分子内の不飽和結合に酸素が結合、つまり酸化されて、酸化熱が発生します。
この酸化熱が蓄積され、発火点に達すると発火します。
乾性油とは
ヨウ素価が大きい(ヨウ素価130以上)油脂を乾性油といいます。
乾性油は不飽和度が高い、不飽和結合が多い油脂で、乾きやすく、空気中に長時間放置すると、酸化により固化し、自然発火を起こしやすくなります。
ヨウ素価とは
ヨウ素価は、不飽和結合の多さを表す指標です。
ヨウ素価は、油脂100gが吸収するヨウ素のグラム数で、不飽和度が高い(分子内に不飽和結合が多い)油脂ほどヨウ素価が大きくなります。
代表的な乾性油
- アマニ油
「自然発火/乾性油/ヨウ素価が大きい/アマニ油/酸化熱」のキーワードだけで得点できることも少なくありません。
語呂:士官用アーマーさん
(偉い人用の鎧です)
士 :自然発火
官 :乾性油
用 :ヨウ素価が大きい
重合熱による自然発火
酸化プロピレン、アクリル酸等の重合による発熱で自然発火が発生することがあります。
燃焼の三要素と消火の三要素
燃焼の三要素のいずれかが欠ければ燃焼は生じません。
そのため、消火するにはいずれかを除去すればいいことになります(消火の三要素)。
- 可燃物→可燃物を除去→除去効果による消火
- 酸素供給源→酸素供給を遮断→ 窒息効果による消火
- 点火源→引火点または発火点未満に冷却→ 冷却効果による消火
除去効果による消火(除去消火)
除去効果による消火(除去消火)は、可燃物を除去する消火方法です。
ex.ろうそくの炎を吹き消す
窒息効果による消火(窒息消火)
窒息効果による消火(窒息消火)は、酸素の供給を遮断する消火方法です。
ex.アルコールランプの炎に蓋をして消す
酸素濃度を0にする必要はなく、燃焼が継続できない酸素濃度(石油類では1気圧において14~15vol%)になれば燃焼は停止します。
冷却効果による消火(冷却消火)
冷却効果による消火(冷却消火)は、可燃物から熱を奪い、引火点未満または発火点未満にして燃焼の継続を止める消火方法です。
ex.水による消火
消火の四要素
負触媒効果(抑制効果)による消火
消火の三要素のほか、燃焼という連鎖的な酸化反応を遅らせることで消火する方法があり、燃焼を化学的に抑制することから負触媒効果または抑制効果と呼ばれます。
消火の四要素
消火の三要素に負触媒効果(抑制効果)による消火を加えて、消火の4要素と呼びます。
火災の区分
火災は、消火に使用する消火剤の種類等から次のように区分されます。
A火災(普通火災)
A火災(普通火災)は、紙、木材、布、繊維等が燃焼する火災です。
覚え方:ありふれた(A)火災
B火災(油火災)
B火災(油火災)は、ガソリン、灯油、油脂、アルコール等が燃焼する火災です。
覚え方:あ「ぶ」ら(B)火災
C火災(電気火災)
C火災(電気火災)は、電気機器、電気器具、変圧器、モーターによる火災です。
覚え方:Current(C)火災:(electric current:電流)
消火剤と消火効果
消火剤の分類
消火剤は、物質の三態(液体、気体、固体)に対応させて整理すると覚えやすくなります。
液体の消火剤
水系消火剤
- 水消火剤
- 強化液消火剤
- 泡消火剤
→水の冷却効果が基本
気体の消火剤
ガス系消火剤
- ハロゲン化物消火剤
- 二酸化炭素消火剤
→酸素の分圧を下げ、酸素を排除する窒息効果が基本
固体の消火剤
- 粉末消火剤
- 金属火災用消火剤
- 簡易消火用具
→可燃物の表面を覆う窒息効果が基本
水系消火剤
水系消火剤は、水または水溶液を消火剤にします。
水消火剤
水消火剤は、水を消火剤とします。
- 冷却効果による消火
- 蒸発した水(水蒸気)が空気中の酸素と可燃性蒸気を希釈する作用も
水消火剤の特徴
- 基本は冷却効果による消火、水は蒸発熱と比熱が大きく冷却効果が大きい
- 水は安価で入手が容易であり、大量の使用が可能
- 水は油より重い→油が水の表面を伝って広がるおそれ→B火災(油火災)に欠点
- 水は電気を伝える→消火作業者が感電するおそれ→C火災(電気火災)に欠点
- 霧状にすることで感電を防止、C火災(電気火災)に対応
水消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) 〇
- B火災(油火災) 棒状× 霧状 ×
- C火災(電気火災) 棒状× 霧状 〇
強化液消火剤
強化液消火剤は、水にアルカリ金属塩(炭酸カリウム等)を加えた濃厚な水溶液を消火剤とします。
- 水の冷却効果
- 燃焼を化学的に抑制する効果(負触媒効果)による消火
強化液消火剤の特徴
- 濃厚な水溶液であり、-20℃でも凍結しないため、寒冷地でも使える
- 霧状にすることで、B火災(油火災)に対応(負触媒効果による消火)
強化液消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) 〇
- B火災(油火災) 棒状× 霧状 〇
- C火災(電気火災) 棒状× 霧状 〇
泡消火剤
泡消火剤は、化学的または機械的に発生させた泡を消火剤とします。
泡消火剤の特徴
・普通火災に対しては冷却効果および窒息効果による消火
・油火災に対しては窒息効果による消火(油面を泡で覆う)
・泡消火剤は電気を伝えるため、消火作業者に感電のおそれ→C火災(電気火災)に対応しない
消火剤としての泡に求められる特性
- 流動性・展開性
- 起泡性
- 耐油・耐火・耐熱性
- 安定性
- 長寿命性
→よく広がって泡立ちが良い、熱に強く安定して長持ちが理想
泡の種類と特性
泡の種類 泡のイメージ 流動性・起泡性 耐熱性・安定性
タンパク泡 メレンゲ・硬く重い △ 〇
合成界面活性剤泡 洗剤の泡・柔らかく軽い 〇 △
泡消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) 〇
- B火災(油火災) 〇
- C火災(電気火災) ×
水溶性液体用泡消火剤(耐アルコール泡消火剤)
水溶性液体用泡消火剤(耐アルコール泡消火剤)は、水溶性可燃性液体に泡が溶けないようにした泡消火剤です。
アルコールやアセトン等の水溶性液体の消火に対応しています。
水溶性液体用泡消火剤は、性質・消火科目でも頻出です。
水系消火剤の語呂合わせ
語呂:自ら足切り、今日から海老切りを仕切り、泡海老と鯛のあら
(自分から大学受験で足きりに引っかかり、料理学校で海老を切る仕事を仕切るように。泡だらけの海老と鯛のあらを調理しています)
自ら :水消火剤
あ :A火災
し :C火災
切り :霧状
今日から:強化液消火剤
え :A火災
び切り :B火災・霧(状)
仕切り :C火災・霧(状)
泡 :泡消火剤
え :A火災
びと :B火災
鯛の :耐
あら :アルコール
ガス系消火剤
ガス系消火剤は、気体を消火剤にします。
ガス系消火剤に共通する特徴
- A火災(普通火災)に対応しない
- 消火による汚損が少ない→精密機器や高額なものの消火に利用
- 電気絶縁性が高く、消火作業者の感電がないので、電気火災に有効
ハロゲン化物消火剤
ハロゲン化物消火剤は、ハロゲン化物を消火剤とします。
ハロゲン化物消火剤の特徴
- 負触媒効果による消火
- 窒息効果による消火
- 高温になると有毒ガス発生のおそれ
ハロゲン化物消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) ×
- B火災(油火災) 〇
- C火災(電気火災) 〇
二酸化炭素消火剤
二酸化炭素消火剤は、不活性ガスである二酸化炭素を消火剤とします。
二酸化炭素消火剤の特徴
- 窒息効果による消火
- 蒸発熱による冷却効果も
- 負触媒効果(抑制効果)はない
- 電気機器に影響を及ぼしにくい
- 高温になると金属と反応するため、金属火災に対応しない
二酸化炭素消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) ×
- B火災(油火災) 〇
- C火災(電気火災) 〇
ガス系消火剤の語呂合わせ
語呂:キビシー
キ :気体の消火剤(ガス系消火剤)
ビ :B火災
シー :C火災
粉末系消火剤
粉末系消火剤は、粉末を消火剤とします。
粉末系消火剤に共通する特徴
- 負触媒効果(抑制効果)による消火
- 燃焼面を覆う窒息効果による消火
- B火災(油火災)及びC火災(電気火災)に対応
- 粉末は不導体なので、消火作業者の感電はない
- 粒子が小さいほど消火効果が高い
- 吸湿固化により粒子が大きくなることを防ぐため、シリコン樹脂等により防湿処理がされる
- 消火剤による汚損が大きい
- 粉末は消火剤の種類ごとに着色
リン酸塩類消火剤
リン酸塩類(リン酸二水素アンモニウム)を主成分とします。
リン酸塩類消火剤の特徴
- 負触媒効果に優れた消火剤
- 3種類すべての火災に対応できるABC消火剤
- 淡紅色に着色((A)あわい(B)べに(C)カラーで無理やり覚える)
リン酸塩類消火剤の色については、出題頻度が高くなっています。
知っているだけで得点できるので、覚えておきたいところです。
リン酸塩類消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) 〇
- B火災(油火災) 〇
- C火災(電気火災) 〇
炭酸水素塩類消火剤
炭酸水素塩類(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)を主成分とします。
炭酸水素塩類消火剤の特徴
- リン酸塩類に比べ負触媒効果に劣る
- 炭酸水素ナトリウム(重曹)は白色または淡緑色
- 炭酸水素カリウムは紫色(仮村←炎色反応と同じ)に着色
炭酸水素塩類消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) ×
- B火災(油火災) 〇
- C火災(電気火災) 〇
粉末消火剤の語呂合わせ
語呂:不倫さんは恵比寿顔のタンスバカ
(不倫さんは福が来そうなお顔をしたタンス好きです)
不 :粉末消火剤
倫さんは :リン酸塩類消火剤
恵比寿顔の:A火災、B火災及びC火災
タンス :炭酸水素塩類消火剤
バカ :B火災及びC火災
静電気
静電気は、物体に静止した電荷が蓄えられている状態や蓄えられている電荷のことを指します。
静止した電荷を蓄えられていることが帯電、電荷を帯びるといいます。
帯電は電気的に偏った状態であり、物質の三態(固体、液体及び気体)すべてで発生することがあります。
電荷
電荷は、粒子や物体が帯びている電気の量です。
この電荷には正電荷と負電荷があります。
物質の接触・移動により電荷は移動します。
主に物質内の電子が移動し、電気的に偏りが生じて静電気が発生します。
電気量保存の法則(電荷保存の法則)
電荷が移動しても、その前後で電気量の総和は変化しません。
これを電気量保存の法則(電荷保存の法則)といいます。
静電気力(クーロン力)
同じ電荷の間には斥力(反発する力)、異なる電荷の間には引力(引き合う力)が働きます。
語呂:クロちゃんのせいで委員が同席
クロちゃんの:クーロン力
せいで :静電気力
委 :異なる電荷
員 :引力
同 :同じ電荷
席 :斥力
静電気の発生機構
基本:異質な不導体がくっついたり離れたりすると発生
例外:誘電帯電:帯電した物体が近くに接近すると発生
静電気の発生しやすさ
- 静電気は電気抵抗が大きい物質ほど発生しやすい
- 合成繊維は、天然繊維に比べ静電気を発生しやすい
合成繊維:ナイロン、ポリエステル、アクリル等
天然繊維:木綿等
静電気対策
静電気の発生を抑える
固体の静電気
- 摩擦や接触を少なくする
- 接触面積や接触圧力を小さくする
- 分離速度を小さくする(急激に剥がさない)
液体の静電気
- 液体の流動速度や噴出速度を小さくする(遅くする)
- 不純物や異物の混入を避ける
その他
発生しにくい素材を使う
→服装の素材を化学繊維ではなく自然繊維を使う等
静電気を放電させる
- アース(接地)する
- 湿度を高める(加湿器の使用、床面に水を撒く等)
- 注入、攪拌等の後には静置時間を置く
単体・化合物・混合物
純物質と混合物・単体と化合物
物質は純物質と混合物に分けられれます。
さらに、純物質は単体と化合物に分けられます。
- 純物質
- 単体
- 化合物
- 混合物
純物質
純物質は、化学的に単一の物質からなるものです。
純物質は、単体と化合物に分けられます。
単体
単体は、1種類の元素からなる純物質です。
単体の例
水素(H2)、酸素(O2)、ナトリウム(Na)、硫黄(S)等
化合物
化合物は、化合によってできた、2種類以上の元素からなる純物質です。
化合は、2種類以上の物質が化学的に結合して別の物質を生じることです。
化合物の例
水(H2O)、二酸化炭素(CO2)、塩化ナトリウム(NaCl)、エタノール(C2H5OH)等
混合物
混合物は、2種類以上の物質が化学的な結合をせずに混じったものです。
混合物の例
空気(窒素、酸素等)、ガソリン(炭素数4~10程度の炭化水素)、海水(水、塩化ナトリウム等)等
同素体
同素体は、同一の元素から成りますが、化学的性質が異なる単体です。
同素体が存在する元素
硫黄(S):斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄
炭素(C):ダイヤモンド、黒鉛(グラファイト)、フラーレン
酸素(O):酸素(O2)、オゾン(O3)
リン(P):黄リン、赤リン
同素体が存在する元素は「SCOP(スコップ)」で覚えると、古から伝わっています。
単体・化合物・混合物の区別
危険物乙4試験では単体、化合物、混合物を区別させる問題が出されます。
それほど複雑な問題は出されませんので、勉強を進めていればできるようになります。
単体・化合物・混合物の区別の出題例
単体の出題例
- 酸素(酸素、オゾン)
- 炭素(ダイヤモンド、黒鉛(グラファイト)
- 硫黄
- リン(赤リン、黄リン)
- アルミニウム
- ナトリウム
- 水銀 等
同素体の存在する元素の出題が目立ちます。
化合物の出題例
- 水
- 二酸化炭素
- ジエチルエーテル
- メタノール
- エタノール
- ベンゼン
- 硝酸
- 食塩(塩化ナトリウム)
- 重曹(炭酸水素ナトリウム) 等
なお、食塩と重曹については、文脈によって化合物にも混合物にもなりうるので注意が必要です。
混合物の出題例
- 空気
- ガソリン
- 灯油
- 食塩水
- 砂糖水
空気のような身近なもの、ガソリンや灯油のような危険物第4類、食塩水や砂糖水のような水溶液が出題されています。
酸化と還元
酸化とは
(狭義)物質が酸素と化合すること、物質が酸素を得ること
(広義)物質が水素または電子を失うこと
還元とは
(狭義)物質が酸素を失うこと
(広義)物質が水素または電子を得ること
酸化と還元についてのまとめ
酸素 水素 電子
酸化 得る 失う 失う
還元 失う 得る 得る
語呂:冴える水田教室に参加
冴 :酸素
える :得る
水 :水素
田 :電子
教
室に :失う
参加 :酸化
還元は酸化の逆です。
酸化剤と還元剤
酸化剤
酸化剤は、他の物質を酸化する性質を持つ物質です。
- 強い酸化性
- 助燃性:燃焼を助ける性質←強い酸化性
- 自らは還元される←他の物質を酸化する←強い酸化性
還元剤
還元剤は、他の物質を還元する性質をもつ物質です。
- 強い還元性
- 自らは酸化される→他の物質を還元する
- 可燃性を有することも←自らは酸化される
燃焼における酸化剤と還元剤
燃焼=熱と発光を伴う連鎖的な酸化反応
- 可燃物→酸化される=還元剤
- 酸素供給源→他の物質を酸化する=酸化剤
語呂:金の加減で三強さんか
かねの :可燃物
かげんで :還元(剤)
さんきょう :酸(素)供(給源)
さんか :酸化剤
イオン化傾向
イオン化傾向は、金属が水または水溶液中で陽イオンになろうとする性質です。
金属のイオン化列
イオン化傾向の大小で並べたものが金属のイオン化列です。
K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>H>Cu>Hg>Ag>Pt>Au
イオン化列の覚え方
イオン化列については、古から伝わる覚え方があります。
語呂:貸そうかな、まああてにすんなひどすぎる借金
貸そう :K(カリウム)
か :Ca(カルシウム)
な、 :Na(ナトリウム)
ま :Mg(マグネシウム)
あ :Al(アルミニウム)
あ :Zn(亜鉛)
て :Fe(鉄)
に :Ni(ニッケル)
すん :Sn(スズ)
な :Pb(鉛)
ひ :H(水素)
ど :Cu(銅)
す :Hg(水銀)
ぎる :Ag(銀)
借 :Pt(プラチナ、白金)
金 :Au(金)
危険物取扱者試験では、イオン化列の左にLi(リチウム)を追加して、
「リッチに貸そうかな、まああてにすんなひどすぎる借金」
としておくと対応できる場面が増えます。
(Li>)K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>H>Cu>Hg>Ag>Pt>Au
主な気体の特徴
酸素
- 常温常圧(20℃1気圧)で気体
- 無色無臭
- 液体は淡青色
- 大気の約21%を占める
- 不燃性、支燃性を示す
二酸化炭素と一酸化炭素
二酸化炭素
常温常圧で気体
無色無臭
空気比重>1(1.5空気より重い)
不燃性、消火剤に使用される
水に溶け、水溶液は弱酸性(炭酸水)
加圧した状態で温度を下げると液化しやすい
人体に無毒、ただし高濃度で有毒
一酸化炭素
- 常温常圧で気体
- 無色無臭
- 空気比重<1(0.97、空気より軽い)
- 可燃性
- 水にほとんど溶けない
- 液化しにくい
- 人体に有毒
- 淡青色の炎で燃焼、二酸化炭素を生成
二酸化炭素と一酸化炭素の比較
二酸化炭素 一酸化炭素
空気比重 1.5(空気より重い) 0.97(空気より軽い)
燃焼性 不燃性 可燃性
水溶性 溶ける ほとんど溶けない
酸化性・還元性 酸化性 還元性
液化 低温加圧下で容易 困難
毒性 ほぼ無毒 有毒
水素
- 常温常圧で気体
- 無色無臭
- 空気比重<1(空気より軽い、物質中最も軽い)
- 可燃性、青白い炎で燃焼、水(H2O)を生じる
- 燃焼範囲が極めて広い(4~75%)
- 水に溶けにくい