消火方法と消火剤の覚え方
燃焼の三要素 消火の三要素
可燃物 → 除去効果による消火
酸素供給源 → 窒息効果による消火
点火源 → 冷却効果による消火
物質の三態 消火剤
液体 → 水系消火剤
気体 → ガス系消火剤
固体 → 粉末系消火剤等
水系消火剤
自ら足切り
今日から海老切りの仕切り
泡海老スタイル
ガス系消火剤
キビシー
粉末消火剤
不倫さんは恵比寿のタンスバカ
燃焼の三要素と消火の三要素
燃焼の三要素のいずれかが欠ければ燃焼は生じません。
そのため、消火するにはいずれかを除去すればいいことになります(消火の三要素)。
- 可燃物→可燃物を除去→除去効果による消火
- 酸素供給源→酸素供給を遮断→ 窒息効果による消火
- 点火源→引火点または発火点未満に冷却→ 冷却効果による消火
除去効果による消火(除去消火)
除去効果による消火(除去消火)は、可燃物を除去する消火方法です。
ex.ろうそくの炎を吹き消す
ろうそくの芯から供給される可燃性蒸気を、炎の周辺から吹き飛ばす
窒息効果による消火(窒息消火)
窒息効果による消火(窒息消火)は、酸素の供給を遮断する消火方法です。
可燃物を不燃性物質等で覆う等、酸素が供給されないようにして消火します。
ex.アルコールランプの炎に蓋をして消す
なお、窒息効果による消火で、酸素濃度を0にする必要はありません。
燃焼が継続できない酸素濃度(石油類では1気圧において14~15vol%)になれば燃焼は停止するからです。
冷却効果による消火(冷却消火)
冷却効果による消火(冷却消火)は、可燃物から熱を奪い、引火点未満または発火点未満にして燃焼の継続を止める消火方法です。
ex.水による消火
可燃物に水をかけ、引火点未満に冷やして消火する
消火の四要素
負触媒効果(抑制効果)による消火
消火の三要素のほか、燃焼という連鎖的な酸化反応を遅らせることで消火する方法があり、燃焼を化学的に抑制することから負触媒効果または抑制効果と呼ばれます。
消火の四要素
消火の三要素に負触媒効果(抑制効果)による消火を加えて、消火の4要素と呼びます。
火災の区分
火災は、消火に使用する消火剤の種類等から次のように区分されます。
A火災(普通火災)
A火災(普通火災)は、紙、木材、布、繊維等が燃焼する火災です。
覚え方:ありふれた(A)火災
B火災(油火災)
B火災(油火災)は、ガソリン、灯油、油脂、アルコール等が燃焼する火災です。
覚え方:あ「ぶ」ら(B)火災
C火災(電気火災)
C火災(電気火災)は、電気機器、電気器具、変圧器、モーターによる火災です。
覚え方:Current(C)火災:(electric current:電流)
消火剤と消火効果
消火剤の分類
消火剤は、物質の三態(液体、気体、固体)に対応させて整理すると覚えやすくなります。
液体の消火剤
水系消火剤
- 水消火剤
- 強化液消火剤
- 泡消火剤
→水の冷却効果が基本
気体の消火剤
ガス系消火剤
- ハロゲン化物消火剤
- 二酸化炭素消火剤
→酸素の分圧を下げ、酸素を排除する窒息効果が基本
固体の消火剤
- 粉末消火剤
- 金属火災用消火剤
- 簡易消火用具
→可燃物の表面を覆う窒息効果が基本
水系消火剤
水系消火剤は、水または水溶液を消火剤にします。
水消火剤
水消火剤は、水を消火剤とします。
- 除去効果による消火
- 蒸発した水(水蒸気)が空気中の酸素と可燃性蒸気を希釈する作用も
水消火剤の特徴
- 基本は冷却効果による消火、水は蒸発熱と比熱が大きく冷却効果が大きい
- 水は安価で入手が容易であり、大量の使用が可能
- 水は油より重い→油が水の表面を伝って広がるおそれ→B火災(油火災)に欠点
- 水は電気を伝える→消火作業者が感電するおそれ→C火災(電気火災)に欠点
- 霧状にすることで感電を防止、C火災(電気火災)に対応
水消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) 〇
- B火災(油火災) 棒状× 霧状×
- C火災(電気火災) 棒状× 霧状〇
強化液消火剤
強化液消火剤は、水にアルカリ金属塩(炭酸カリウム等)を加えた濃厚な水溶液を消火剤とします。
- 水の冷却効果
- 燃焼を化学的に抑制する効果(負触媒効果)による消火
強化液消火剤の特徴
- 濃厚な水溶液であり、-20℃でも凍結しないため、寒冷地でも使える
- 霧状にすることで、B火災(油火災)に対応(負触媒効果による消火)
強化液消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) 〇
- B火災(油火災) 棒状× 霧状〇
- C火災(電気火災) 棒状× 霧状〇
泡消火剤
泡消火剤は、化学的または機械的に発生させた泡を消火剤とします。
泡消火剤の特徴
・普通火災に対しては冷却効果および窒息効果による消火
・油火災に対しては窒息効果による消火(油面を泡で覆う)
・泡消火剤は電気を伝えるため、消火作業者に感電のおそれ→C火災(電気火災)に対応しない
消火剤としての泡に求められる特性
- 流動性・展開性
- 起泡性
- 耐油・耐火・耐熱性
- 安定性
- 長寿命性
→よく広がって泡立ちが良い、熱に強く安定して長持ちが理想
泡の種類と特性
泡の種類 泡のイメージ 流動性・起泡性 耐熱性・安定性
タンパク泡 メレンゲ・硬く重い △ 〇
合成界面活性剤泡 洗剤の泡・柔らかく軽い 〇 △
泡消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) 〇
- B火災(油火災) 〇
- C火災(電気火災) ×
水溶性液体用泡消火剤(耐アルコール泡消火剤)
水溶性液体用泡消火剤(耐アルコール泡消火剤)は、水溶性可燃性液体に泡が溶けないようにした泡消火剤です。
アルコールやアセトン等の水溶性液体の消火に対応しています。
水系消火剤の語呂合わせ
語呂:自ら足切り
自ら :水消火剤
あ :A火災
し :C火災
切り :霧状
語呂:今日から海老切りの仕切り
今日から:強化液消火剤
え :A火災
び切りの:B火災・霧(状)
仕切り :C火災・霧(状)
語呂:泡海老スタイル
泡 :泡消火剤
え :A火災
び :B火災
ス :水溶性液体
タイル :耐アルコール
ガス系消火剤
ガス系消火剤は、気体を消火剤にします。
ガス系消火剤に共通する特徴
- A火災(普通火災)に対応しない
- 消火による汚損が少ない→精密機器や高額なものの消火に利用
- 電気絶縁性が高く、消火作業者の感電がないので、電気火災に有効
ハロゲン化物消火剤
ハロゲン化物消火剤は、ハロゲン化物を消火剤とします。
ハロゲン化物消火剤の特徴
- 負触媒効果による消火
- 窒息効果による消火
- 化学的に安定、機器等に影響を及ぼしにくい
- 高温になると有毒ガス発生のおそれ
ハロゲン化物消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) ×
- B火災(油火災) 〇
- C火災(電気火災) 〇
二酸化炭素消火剤
二酸化炭素消火剤は、不活性ガスである二酸化炭素を消火剤とします。
二酸化炭素消火剤の特徴
- 窒息効果による消火
- 蒸発熱による冷却効果も
- 負触媒効果はない
- 電気機器に影響を及ぼしにくい
- 高温になると金属と反応するため、金属火災に対応しない
二酸化炭素消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) ×
- B火災(油火災) 〇
- C火災(電気火災) 〇
ガス系消火剤の語呂合わせ
語呂:キビシー
キ :気体の消火剤(ガス系消火剤)
ビ :B火災
シー :C火災
粉末系消火剤
粉末系消火剤は、粉末を消火剤とします。
粉末系消火剤に共通する特徴
- 負触媒効果による消火
- 燃焼面を覆う窒息効果による消火
- B火災(油火災)及びC火災(電気火災)に対応
- 粉末は不導体なので、消火作業者の感電はない
- 粒子が小さいほど消火効果が高い
- 吸湿固化により粒子が大きくなることを防ぐため、シリコン樹脂等により防湿処理がされる
- 消火剤による汚損が大きい
- 粉末は消火剤の種類ごとに着色
リン酸塩類消火剤
リン酸塩類(リン酸二水素アンモニウム)を主成分とします。
リン酸塩類消火剤の特徴
- 負触媒効果に優れた消火剤
- 3種類すべての火災に対応できるABC消火剤
- 淡紅色に着色((A)あわい(B)べに(C)カラーで無理やり覚える)
リン酸塩類消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) 〇
- B火災(油火災) 〇
- C火災(電気火災) 〇
炭酸水素塩類消火剤
炭酸水素塩類(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)を主成分とします。
炭酸水素塩類消火剤の特徴
- リン酸塩類に比べ負触媒効果に劣る
- 炭酸水素ナトリウム(重曹)は白色または淡緑色
- 炭酸水素カリウムは紫色(仮村←炎色反応と同じ)に着色
炭酸水素塩類消火剤が適応する火災
- A火災(普通火災) ×
- B火災(油火災) 〇
- C火災(電気火災) 〇
粉末系消火剤の語呂合わせ
語呂:不倫さんは恵比寿のタンスバカ
(不倫さんは渋谷区のタンス好きです)
不 :粉末系消火剤
倫さんは :リン酸塩類消火剤
恵比寿の :A火災、B火災及びC火災
タンス :炭酸水素塩類消火剤
バカ :B火災及びC火災
金属火災用消火剤
乾燥炭酸ナトリウム粉末や乾燥塩化ナトリウム粉末等を消火剤とします。
金属火災用消火剤の特徴
- 消火剤が可燃物表面を覆う窒息効果による消火
- 架橋剤や流動性付与剤等が添加されることもある
簡易消火用具
消火能力のある水、砂または粉上のもの、これらを使用するためのバケツ等の用具
具体的には、水バケツ、乾燥砂、膨張ひる石、膨張真珠岩等
簡易消火用具の特徴
- 水バケツは、水による冷却効果による消火
- 乾燥砂、膨張ひる石、膨張真珠岩は、酸素供給を遮断する窒息効果による消火
- 乾燥砂、膨張ひる石、膨張真珠岩は、第1類から第6類までのすべての危険物に対応