イオン化傾向と金属の腐食の覚え方
イオン化列
リッチに貸そうかな、まああてにすんなひどすぎる借金
両性元素と不動態
寮生であるアスナはアルテニス不動
イオン化傾向と金属の反応性
貸そうかな水
ま、熱湯
スンナさん
イオン化傾向
イオン化傾向は、金属が水または水溶液中で陽イオンになろうとする性質です。
金属のイオン化列
イオン化傾向の大小で並べたものが金属のイオン化列です。
K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>H>Cu>Hg>Ag>Pt>Au
イオン化列の覚え方
イオン化列については、古から伝わる覚え方があります。
語呂:貸そうかな、まああてにすんなひどすぎる借金
貸そう :K(カリウム)
か :Ca(カルシウム)
な、 :Na(ナトリウム)
ま :Mg(マグネシウム)
あ :Al(アルミニウム)
あ :Zn(亜鉛)
て :Fe(鉄)
に :Ni(ニッケル)
すん :Sn(スズ)
な :Pb(鉛)
ひ :H(水素)
ど :Cu(銅)
す :Hg(水銀)
ぎる :Ag(銀)
借 :Pt(プラチナ、白金)
金 :Au(金)
危険物取扱者試験では、イオン化列の左にLi(リチウム)を追加して、
「リッチに貸そうかな、まああてにすんなひどすぎる借金」
としておくと対応できる場面が増えます。
(Li>)K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>H>Cu>Hg>Ag>Pt>Au
イオン化傾向と金属の反応性
常温の水と反応
イオン化傾向がNaよりも大きい金属は、常温の水と反応して水素H2を発生します。
K>Ca>Na → 常温の水と反応してH2を発生
語呂:貸そうかな水
(息継ぎついでに水との反応を覚えておきます)
熱水(沸騰水)と反応
Mgは、常温の水とは反応しませんが、熱水(沸騰水)と反応して水素H2を発生します。
Mg → 熱水(沸騰水)と反応して水素H2を発生
語呂:マグカップに熱湯
マグカップに:Mg(マグネシウム)
熱湯 :熱水(沸騰水)
酸と反応
Hよりもイオン化傾向の大きい金属は、酸(塩酸、希硫酸等)に溶けて水素H2を発生します。
(Li>)K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb
→ 酸に溶けて水素H2を発生
語呂:スンナさん
スンナ :~Sn、Pb
さん :酸と反応
Hよりもイオン化傾向の小さい金属は、常温の水、熱水(沸騰水)、塩酸、希硫酸等には溶けません。
Cu>Hg>Ag>Pt>Au → 常温の水、熱水(沸騰水)、塩酸、希硫酸等に溶けない
酸化力のある酸との反応
熱濃硫酸、濃硝酸、希硝酸等
Cu(銅)、Hg(水銀)及びAg(銀)は、常温の水、熱水(沸騰水)、塩酸、希硫酸等に溶けませんが、熱濃硫酸、濃硝酸、希硝酸等の酸化力のある酸には溶けます。
Cu>Hg>Ag → 酸化力のある酸(熱濃硫酸、濃硝酸、希硝酸等)に溶ける
王水
Pt(プラチナ)及びAu(金)は、水やほとんどの酸に溶けませんが、王水には溶けます。
王水は、濃硝酸と濃塩酸の体積比が1:3の混合物です。
Pt>Au → 王水に溶ける
不動態
Al(アルミニウム)、Fe(鉄)及びNi(ニッケル)は酸に溶けて水素H2を発生しますが、濃硝酸には溶けません。
Al、Fe及びNiを濃硝酸に作用させると、表面に緻密な酸化物の被膜が形成され、それ以上反応しなくなります。
そのため、内部が濃硝酸から保護される状態になります。
このような状態を不動態といいます。
Al、Fe及びNi → 酸に溶けるが、濃硝酸には溶けない(不動態)
語呂:寮生であるアスナはアルテニス不動産
(両性元素のAl、Zn、Sn及びPbとあわせた語呂合わせです、アルテニスはアルテミスの訛りのつもりです)
寮生で :両性元素
ある :Al(アルミニウム)
ア :Zn(亜鉛)
ス :Sn(スズ)
ナは :Pb(鉛)
アル :Al(アルミニウム)
テ :Fe(鉄)
ニス :Ni(ニッケル)
不動産 :不動態
金属の腐食
金属の腐食は、金属がそれを取り囲む環境の物質と化学的あるいは電気化学的に反応して、表面 から消耗したり金属以外の物質に変わることで金属が失われていく現象です。
金属の腐食は、金属の設備の耐久性を下げるほか、進行すると流出事故等の要因となります。
事故を未然に防ぐためにも、金属の腐食について十分に対策する必要があります。
金属が腐食しやすい条件
酸との接触
- 酸性の強い土中に埋設
- 配管等を酸や海水に浸す
電流による腐食
- 土質の異なる場所にまたがって配管等を埋設
- 配管等に異なる金属が接触
- 迷走電流による腐食
土質の異なる場所にまたがって配管等を埋設
異なる土質の土壌間の通気の差による酸素との接触量の違いのために配管に電流が流れ、腐食しやすくなります。
配管等に異なる金属が接触
配管等に使用されている金属よりもイオン化傾向の小さい金属が接触している場合、配管等の腐食が進行します。
迷走電流による腐食
迷走電流は、電気鉄道等に使用する直流電源がレール等から漏れ、電流が土中に流出し、その一部が埋設配管等に流入することです。
迷走電流が配管を流れることによって、配管等の腐食が進行します。
金属の腐食防止策
- 配置を考慮
- 地下水との接触を避ける
- 物理的に保護
- 配管等を被覆
- 埋設時に塗覆装面を傷つけないようにする
- 化学的に保護
- 強塩基性の環境におく
- 電気防食を施す
物的に保護
配管等を被覆
さや管、スリーブ等を使用したり、エポキシ樹脂塗料等の塗布したりすることで表面を保護、腐食を防止できます。
埋設時に塗覆装面を傷つけないようにする
塗覆装面の傷から腐食が進行しないようにします。
物理的・化学的に保護
強塩基性の環境におく
強い塩基性の環境におくことで、鋼製の配管等の表面に薄い酸化膜(不動態被膜、不動態)が形成され、腐食を防止します。
例えば、強塩基性のコンクリート中に埋設することで腐食を防止することができます。
ただし、コンクリートの劣化等による中性化が進むと、配管等の腐食が進むことになります。
電気防食を施す
意図的に配管等に電流を発生させ、腐食を防ぐ方法が電気防食法です。
電気防食法には, 流電陽極法と外部電源法があります
流電陽極法
流電陽極法は、電気防食の方法の一つで、配管等に使用される金属よりイオン化傾向の大きい金属をつなぎ、発生する電流によって腐食を避ける方法です。
イオン化傾向の大きい金属が地中にイオンとなって放出される一方、配管等は腐食を避けることができます。
配管が鉄(鋼)製の場合、イオン化傾向が鉄より大きいマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)や亜鉛(Zn)をつなぐことで腐食を防ぐことができます。