危険物乙4試験のように暗記が有効な試験の場合、全体像を把握することが特に重要です。
それぞれの項目が全体のどこに位置づけられるのかがわからないと、せっかく覚えても忘れやすく、思い出しにくくなります。
本格的な暗記をはじめる前に全体像を把握しておくことは、効率的な学習のために極めて重要になります。
危険物に関する法令とは
危険物に関する法令=消防法、危険物の規制に関する政令及び危険物の規制に関する規則
危険物規制の根拠法=消防法
消防法の目的
火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資する
- 国民を火災から保護
- 火災又は地震等の災害による被害を軽減
- 災害等による傷病者の搬送を適切に行う
- →安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資する
つまり、火災をはじめとする災害対策を進めることにより社会の幸せを増進することが消防法の目的です。
その手段の一つとして危険物規制があります。
したがって、危険物規制は、火災等の災害対策の観点から行われることになります。
危険物に関する法令の構成
危険物に関する法令は、おおむね次の項目でまとめることができます。
- 定義
- 行政手続き
- 事故対策制度
- 技術上の基準
- 監督制度
- その他
(なお、これは試験対策のもので、制度上の分類とは異なっているところがあります。)
1.定義
はじめに危険物に関する法令で用いられる専門用語を定義しています。
定義は法令の運用にあたって重要なものですが、危険物取扱者試験でも頻出される重要事項です。
- 定義が正しいか問う
- 類似した概念の定義と入れ替える
といった問題が試験では出されます。
こうした問題は知っているか否だけで答えられるので、正答率も高く、絶対に間違えられないものになっています。
定義のうち重要なのは次のものです。
- 危険物
- 指定数量
- 指定数量の倍数
- 製造所等
危険物
危険物=消防法で規定する危険物
危険物取扱者試験での「危険物」は「消防法で規定する危険物」です。
危険物とは、火災や爆発の危険性がある物質のうち、法別表第一の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性質を有するものをいいます。
「危険物」は危険なもの全般ではなく、火災や爆発の危険性がある物質のうち特定のものを指すことになります。
危険物の分類
第1類から第6類までに分類
危険物取扱者試験では、第1類から第6類までの性質について聞かれます。
第4類危険物
第4類危険物=引火性液体
第4類危険物とは、液体であって、引火の危険性を判断するための政令で定める試験において引火性を示すものをいいます。
第4類危険物は、引火の危険性がある液体です。
「引火の危険性がある」とは、引火点を有することを意味します。
「液体」とは、常温常圧(20℃1気圧)で固体でも気体でもないことを意味します(厳密にいうと少し違うのですが)。
第4類危険物はつぎの7つに分類されます。
- 特殊引火物
- 第1石油類
- アルコール類
- 第2石油類
- 第3石油類
- 第4石油類
- 動植物油類
指定数量
指定数量=危険物の危険性を算定する基準
指定数量とは、危険物の危険性を勘案して政令で定める数量をいいます。
危険物の危険性を算定する基準で、危険性が高いものほど少ない数量が定められています。
指定数量の倍数
指定数量の倍数=貯蔵または取扱う危険物が指定数量の何倍か
指定数量の倍数とは、実際に貯蔵し、または取扱う危険物の数量をその危険物の指定数量で割って得た値
をいいます。
指定数量の倍数は、貯蔵または取扱う危険物が指定数量の何倍かを表します。
危険物取扱者試験では、指定数量の倍数の計算問題が必ず出題されます。
落ち着いて計算すれば必ず正解できる問題なので、間違えるわけにはいかない最重要項目の一つです。
製造所等
製造所等=指定数量以上の危険物を貯蔵しまたは取り扱う施設(全12種類)
製造所等は、指定以上の危険物を貯蔵しまたは取り扱う施設で、12種類が定められています。
- 製造所等(12種類)
- 製造所(1種類)
- 貯蔵所(7種類)
- 取扱所(4種類)
12種類の製造所等の名称は学習初期に覚えておく必要があります。
当然ですが、製造所等以外では、指定数量以上の危険物を貯蔵または取扱ってはいけません。
2.行政手続き
消防法で定める危険物に関する行政手続きには次のものがあります。
- 許可・届出
- 危険物取扱者制度等
許可・届出
危険物に関する許可・届出は、物的側面ついて行政が把握するためのものです。
物的な面から、適切な危険物の貯蔵または取扱を確保するためのもので、次のものがあります。
- 市町村長等が行う(権利制限が伴う)
- 製造所等の設置・変更許可
- 変更の届出
- 消防庁または消防署長等の承認(権利は制限されない)
- 仮貯蔵と仮取扱
危険物取扱者制度等
危険物取扱者制度等は、人的側面について、行政が把握するためのものです。
人的な面から、適切な危険物の適切な危険物の貯蔵または取扱を確保するためのもので、次のものがあります。
- 危険物取扱者制度
- ・免状の交付・書換・再交付
- ・保安講習
- 危険物保安監督者
- 危険物保安統括管理者
- 危険物施設保安員
3.事故対策制度
事故対策=事故予防+事故拡大防止
事故対策制度は、事故の予防及び拡大防止のための制度です。
予防制度
予防制度は、製造所等の自主的な予防を支えるものと行政が主体的に行うものに分けられます。
- 自主的な予防対策
- 予防規程
- 定期点検
- 公的な予防制度
- 保安検査
拡大防止制度
拡大防止制度は、事故が発生したときに被害を拡大させないようにするものです。
(なお、保安距離及び保有空地は、消防法上、製造所等の位置、構造及び設備の技術上の基準の一部ですが、わかりやすさ優先で事故対策制度としています。)
近年は以前より細かなところまで問われることが増えています。
- 保安距離
- 保有空地
4.技術上の基準
危険物を安全に扱えるようにするため、危険物にかかる物は技術上の基準を満たさなければなりません。
技術上の基準は項目が多いので、時間がかかり、勉強するのが大変な箇所です。
技術上の基準については、最初から丸暗記しようとするのではなく、試験に出やすいもの、覚えやすいものから覚えていくのが効率的です。
- 製造所等
- 位置、構造及び設備の基準
- 製造所等の基準
- 標識・掲示板
- 貯蔵・取扱の基準
- その他
- 運搬の基準
- その他技術上の基準
- 消火設備の設置基準
- 警報設備
- 位置、構造及び設備の基準
5.監督制度
危険物に関する法令が実効性あるものとなるため、行政が製造所等を監督する制度があります。
市町村長等は、火災予防上の観点から様々な命令を行うことができます。
また、市町村長等は、製造所等の所有者等に重大な違反があった場合には、設置許可の取消し、または使用の停止を命ずることができます。
なお、製造所等の所有者等に違反があっても、比較的重大でないものについては罰金または拘留となるものがあります。
- 市町村長等の監督制度
- 措置命令
- 許可の取消し・使用停止命令
- 罰金または拘留
都道府県知事は消防法の規定に違反した危険物取扱者に対し免状の返納を命ずることができます。
- 都道府県知事の監督制度
- 免状返納命令
6.その他
事故発生時の応急措置について問われることがあります。
もっとも、今のところ
- 私人には公共水道の制水弁を開く権限はない
- 事故発見者は、直ちに消防署等の関係機関に通報しなければならない
の二つの知識があれば、常識で対応できるものばかりが出題されています。