「燃焼」の覚え方
燃焼の三要素
姉さんの加算点
固体の燃焼
コネ姫は金持った子、ジョイナーの部下ね
自己燃焼(内部燃焼)
自然薯を悟空とセルに似せる
燃焼
燃焼は、危険物取扱者試験において非常に重要な項目です。
ほぼ毎回出題される一方、覚えてさえいれば正解できる問題がほとんどなので、しっかり勉強しておきたい項目です。
燃焼とは
燃焼とは、発熱と発光を伴う連鎖的な酸化反応をいいます。
熱と発光を伴う
発熱または発光を伴わないものは燃焼ではありません。
連鎖的な酸化反応
酸化による発熱が周囲の物質を活性化し、その酸化を引き起こす
点火・発火→その熱で周囲が活性化→周囲も点火・発火→その熱で周囲が活性化→…
ex.可燃性液体の燃焼
点火・発火→その熱で周囲に可燃性蒸気の発生・温度上昇→可燃性蒸気に点火・発火→その熱で周囲に可燃性蒸気の発生・温度上昇→…
燃焼後の物質
物質は燃焼により、より化学的に安定した物質に変化します。
ex.
C(黒鉛)+O2→CO2
CnH2n+2(アルカン)+((3n+1)/2)O2→nCO2+(n+1)H2O
(C6H10O5)n(セルロース)+6O2→6CO2+5H2O
燃焼の三要素
燃焼の三要素は、燃焼に必要な3つの要素です。
→いずれか一つでも欠ければ燃焼しません
- 可燃物
- 酸素供給源
- 点火源
語呂:姉さんの加算点
(あえて語呂合わせをするまでもないかもしれませんが)
姉さんの :燃焼の三要素
加 :可燃物
算 :酸素供給源
点 :点火源
可燃物
可燃物は、燃える物質です。
形状(微粉状等)により可燃物となる物質もあります。
ex.金属粉、鉄粉等
酸素供給源
酸素供給源は、可燃物を酸化させる物質です。
酸素供給源には、酸素だけでなく、他の物質を酸化させるものも含まれます。
- 酸素
- 酸化性物質
- 第1類危険物
- 第6類危険物
第5類危険物(自己反応性物質)の多くは分子内に酸素を含有しており、それだけで燃焼します。
→可燃物と酸素供給源が共存
点火源
点火源は、物質に活性化するエネルギーを与えるもので、火をつける力を持つものです。
- 火気
- 火花
- 高温体
摩擦熱等による高温も点火源になりえます。
その他、高温になりうる熱源
- 反応熱
- 酸化熱
- 発酵熱
- 吸着熱
- 重合熱
燃焼の四要素
燃焼の三要素に燃焼の継続(連鎖的な酸化反応)を加えたものを燃焼の四要素とすることがあります。
燃焼の形態
ある物質がどのような燃焼形態をとるかを聞いてくる出題が少なくありません。
知っていれば得点できるものなので、しっかり覚えておきましょう。
- 液体の燃焼
- 蒸発燃焼
- 固体の燃焼
- 表面燃焼
- 蒸発燃焼
- 分解燃焼
- 自己燃焼(内部燃焼)
- 有炎燃焼と無炎燃焼
- 気体の燃焼
- 予混合燃焼
- 拡散燃焼
液体の燃焼
液体の燃焼は蒸発燃焼です。
蒸発燃焼
蒸発燃焼は、蒸発によって生じた可燃性蒸気の燃焼です。
燃焼範囲
蒸発燃焼が起こるためには、可燃性蒸気が燃焼範囲になければなりません。
可燃性蒸気が空気中で燃焼するためには、可燃性蒸気と空気が適切な割合で混合している必要があります。
燃焼範囲とは
燃焼範囲は、空気中で可燃性蒸気が燃焼することができる濃度の範囲です。
- 燃焼範囲は容積百分率(vol%、体積百分率、容積パーセント)で表す
- 容積百分率=((蒸気量)/(空気量+蒸気量))×100%
- 燃焼が爆発となるときは爆発範囲という
燃焼限界
燃焼限界は、燃焼範囲の限界濃度です。
燃焼限界の高濃度側を上限界(上限値)、低濃度側を下限界(下限値)といいます。
前述したとおり、燃焼範囲の下限界に相当する濃度の蒸気を発生する液体の温度が引火点です。
燃焼範囲と危険性
燃焼範囲が広いもの、下限界が小さいものは引火しやすく危険です。
固体の燃焼
固体の燃焼には、表面燃焼、蒸発燃焼と分解燃焼があります。
表面燃焼
表面燃焼では、空気と接触している固体表面が直接燃焼します。
後述の分解燃焼と違い、熱分解を伴いません。
表面燃焼する固体
- 木炭
- コークス
- 金属粉(第2類危険物)
→ほぼ単一の可燃物質(炭素、金属等)になっているもの
蒸発燃焼
蒸発燃焼では、蒸発(昇華)した蒸気が燃焼します。
後述の分解燃焼と違い、熱分解を伴いません。
蒸発燃焼する固体
- 硫黄(第2類危険物)
- ナフタレン
- 固形アルコール(第2類危険物:引火性固体)
→蒸発燃焼するのは、昇華する物質です。
語呂:コネ姫は金持った子、ジョイナーの部下ね
コネ :固体の燃焼
姫は :表面燃焼(ひょう‐めん)
金 :金属粉
持った :木炭
子 :コークス
ジョ :蒸発燃焼
イ :硫黄
ナ :ナフタレン
ー(あ)の:(固形)アルコール
部下ね :分解燃焼
分解燃焼
分解燃焼では、熱分解により生じた可燃性気体が燃焼します。
熱分解は、加熱によって物質を構成する分子がより小さな分子に分解することです。
熱分解により可燃性気体が放出され、その可燃性気体が燃焼します。
分解燃焼する固体
- 木材
- 紙
- 石炭
- プラスチック等の高分子固体
→身の回りの多くの品は、燃えるときには分解燃焼します。
自己燃焼(内部燃焼)
自己燃焼(内部燃焼)は、分解燃焼のうち、分子内に含有する酸素を酸素供給源とする燃焼です。
自己燃焼(内部燃焼)する固体
- セルロイド
- ニトロセルロース
- その他危険物第5類(固体)
語呂:自然薯を悟空とセルに似せる
(山芋でドラゴンボールを再現します)
自然薯を :自己燃焼(じねんじょ→じこねんしょう)
悟空と :第5類
セルに :セルロイド
似せる :ニトロセルロース
有炎燃焼と無炎燃焼
分解燃焼には、有炎燃焼と無炎燃焼とがあります。
有炎燃焼
有炎燃焼は、火炎を有する燃焼です。
無炎燃焼
無炎燃焼は、火炎を有さない燃焼で、燻焼(くんしょう)ともいいます。
ex.たばこ、線香
無炎燃焼の特徴
- 固体の可燃性物質特有の燃焼形態
- 多量の発煙
- 一酸化炭素等の発生
無炎燃焼の原因
- 熱分解による可燃性気体の発生速度が小さい
- 雰囲気(周囲の空気)中の酸素濃度が小さい
→可燃物または酸素(供給源)が不十分
→酸素供給量が増加すると有炎燃焼に移行することがあります。
気体の燃焼
気体の燃焼には、予混合燃焼と拡散燃焼とがあります。
予混合燃焼
予混合燃焼は、可燃性気体と空気を燃焼できる濃度範囲(燃焼範囲)となるように予め混合したものの燃焼です。
拡散燃焼
拡散燃焼は、可燃性気体を空気中に拡散して燃焼範囲とする燃焼です。
燃焼範囲
燃焼範囲は、燃焼可能である可燃性気体と空気の割合の範囲のことです。
可燃性の気体は、空気中で濃すぎても薄すぎても燃焼できません。
可燃性の気体が空気中で燃焼するためには、可燃性の気体と空気が適切な割合で混合している必要があります。
燃焼可能である可燃性気体の空気に対する濃度の範囲が燃焼範囲です。
有機物の燃焼
有機物の燃焼の形態
- 液体の有機物:蒸発燃焼
- 固体の有機物:分解燃焼
- 例外:引火性固体(固形アルコール):蒸発燃焼
有機物の完全燃焼と不完全燃焼
- 完全燃焼すると、水と二酸化炭素等が発生する
- 酸素供給量が不足すると不完全燃焼が発生する
不完全燃焼の特徴
- 一酸化炭素の量が多くなる
- すすの量が多くなる
→一酸化炭素は極めて有毒
引火と発火
引火とは
引火は、空気中で、可燃性物質に外部から火源を与えると燃焼をはじめることです。
引火には、炎や火花等の火種が必要です。
発火とは
発火は、空気中で、可燃性物質に外部から火源を与えなくても燃焼をはじめることです。
発火には火種は必要ありません。
引火点、発火点、燃焼点
引火点
引火点は、液体が引火する最低の液温です。
言い換えると、可燃性液体が、燃焼範囲の下限値の濃度の蒸気を発生するときの液体の温度となります。
試験対策としては、後者の定義が重要になります。
発火点
発火点は、可燃性物質が発火する最低温度です。
つまり、可燃性物質を空気中で加熱したとき、他から火源を与えなくても自ら燃焼を開始する最低温度のことです。
燃焼点
燃焼点は、燃焼を継続させるのに必要な可燃性蒸気が供給される温度です。
引火点、発火点と燃焼点の関係
通常、引火点<燃焼点<発火点です。
参考:燃焼範囲の目安と類型
それぞれの類型の呼称は試験対策上のものです。
公式なものではありません。
危険物第4類の多くの物質は次の類型のいずれかにあてはまります。
個々の物質の燃焼範囲ではなく、どの類型であるかを覚える方が効率的です
特殊引火物型
おおよそ1~40vol%(ジメチルエーテル1.9~36vol%)
メタノール型(とても水溶性)
おおよそ7~40vol%(メタノール)(6.7~37vol%)
エタノール型(水溶性)
おおよそ3~20vol%(エタノール3.3~19vol%)
プロパノール型(やや水溶性)
おおよそ2~13vol%(1-プロパノール2.1~13.7vol%)
炭化水素型(ガソリン型)
おおよそ1~8vol%(1.4~7.6vol%)
燃焼範囲が広いもの、下限界が小さいもの、つまり、左上にあるものは引火しやすく危険ということになります。